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【企画ノート】海外の観光地からヒントを得た、銀山温泉ナイトツアー
2025/11/22

【企画ノート】海外の観光地からヒントを得た、銀山温泉ナイトツアー

まずは自分たちの地域のポジショニングを捉えるところから

鈴木誠人(DMC天童温泉)

「天童温泉から銀山温泉までの行き方を教えてください」

僕がまだ旅館で働いていた時によく電話で問い合わせがあった質問だ。

行く時々によって、公共交通機関の時間が変わるかもしれないと思い毎回ネットで調べて回答していた。

電車に乗って、バスに乗って、時間は何時で、、、、たぶんお客さんも聞いてきている時点で調べるのが難しいとなったのだろう。

旅はこうやって事前準備からあれやこれやしていくのが楽しい。と思っている。便利すぎるのはどうかとも思う。

でも時代がどうしてもそっちにいってしまっているならば、歩み寄らない限り売れるツアーは作れない。いわゆるマーケットイン的な発想である。

①秘境に大変な思いをしていく旅人と②便利に快適に目的地に行きたい旅行者の2者がいるとすると、どちらの方が天童温泉との接続がうまくいくだろう。

そんなことを考えていたのが2017年頃。

まだTENDODAYSが生まれたばかりの頃である。

僕は元々旅行会社で、団体営業と添乗をしていたので海外に行く機会もそこそこあったがその時の経験で思い出すことがあった。

台北と九份。ハノイとハロン湾のような滞在地と目的地の関係性だ。

台北に行けばオプショナルツアーで九份に行く人がほとんどだし(初めての台湾旅行ならほぼ行く)ベトナムのハノイに行けば、中日でハロン湾にいくことが多い。

距離感で言えば、前者は車で片道約1時間、後者は約3時間だ。日本でそれくらい離れた距離で滞在地と目的地がセットに見えている、または発信している地域はあるだろうか。

例えば、東京と富士山とか?海外のエージェントや旅行者からはもしかたらそういう類のものがすでにあるのかもしれない。

その感覚で、滞在地を天童温泉とし、目的地を銀山温泉をした場合、成立するのではないかと考えた。

知っている人からすれば、銀山温泉だって温泉街だから宿泊地(滞在地)なのに、何を言ってるんだと思われるかもしれない。というかこのツアーを発売した当初はそういう風に言われたことがある。

ただ、当時から銀山温泉の冬の人気は爆発的で、冬は宿の予約が取れないという状況が続いていた。それでも近隣から日帰りで訪れる人は増える一方。

温泉街はもちろん、そこにアクセスする人たちで路線バスはパンパンだったのを今でも覚えてる。今もパンパンだが……。

泊まりたくても泊まれない、行きたくても公共交通機関がパンクしかかっている。

そのような状況を見た時に、天童温泉から銀山温泉に行くナイトツアーをやろうと企画した。

このツアーを企画し、販売することによって以下の良いことが起きてほしいと願っていた。

・(お客さんは)銀山温泉に泊まれなくても天童に泊まれば銀山温泉に楽に行ける
・(旅館スタッフは)銀山温泉の行き方をいちいち調べたり説明したりしなくてよくなる→これはお客さんも一緒で、乗り継ぎの検索等に時間を費やさなくてもよくなる
・(天童温泉は)ツアーとして成立すれば、冬場の目玉企画になる。天童温泉の宿泊者が増えればなお最高!

このツアーを考えて出した当初は、温泉が他の温泉に人を送り込むってどういうこと?とか、往復でこんなにお金取るの?いろんな声があがったのを覚えている。

僕らは、銀山温泉のお客さんを奪い取りたいわけではなく、銀山温泉に泊まりたくても泊まれない方をいろいろな意味で救うのがこのツアーである。

金額についても売れれば認められた、価値を感じてもらえたということであるし、売れなければ認めてもらえなかったというだけ。

様子を見て判断するべきことで、最初からあれダメ、これダメと言っていては前に進めない。

コロナが落ち着いてからは、また冬場を中心に爆発的に海外からの旅行者が山形を訪れている。お目当てはほぼ銀山温泉と蔵王の樹氷。

銀山温泉側も温泉街を落ち着いて楽しんでもらうため、試行錯誤しながらも入場規制やライドアンドパークなどの取り組みを進めている。

これらの取り組みは、Don’tではなく旅行者もみなさんも一緒に銀山温泉を楽しめるように協力してやっていきましょうのLet’sである。

僕たちのツアーによって、銀山温泉へのアクセス等の人流を少しでも緩和できたらという狙いもある。

地域間で連携しながら旅行者の安全面(特に冬場で遭難の可能性もある)と地域側のインパクトを減らす取り組みに昇華させていきたい。

だからこそ1本のツアーで30名限定にしているし、時間帯も固定している。

保全と活用は、地域に対しても、人に対しても言えること。

結論として、天童温泉街や天童市内だけに留まらず周辺市町村や周辺観光地と連携して観光地域づくりをしていくことが本当に重要である。

旅行者にとって、市境や県境は関係ない。そこに行きたい思える場所があるかどうか。そこに行く手段があるかどうかである。

特に地方は。

地方は、魅力あるスポットが点在しているからこそ、点と点を結んであげることで、旅行者の利便性や周遊を促すことができる。

もっと俯瞰して、旅行者の導線を意識しないといけないなと改めてこのツアーを通じて感じている。

そしてなにより冬の銀山温泉の景色は唯一無二の美しさがあるので、人生で一度はぜひ訪れてみてほしい。

いや、一度と言わず気に入っていただければ何度でも。